「みずいぼ」と「おたふくかぜ」に、追加・改訂あり
【解説】:子どもに日常みられる主な感染症の解説
インフルエンザ ヘルペス性歯肉口内炎  ノロウイルスと胃腸炎
ヘルパンギーナ アデノウイルス感染症 伝染性紅斑(りんご病)
伝染性軟属腫(みずいぼ) 感染性胃腸炎 溶連菌感染症
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) 水痘(みずぼうそう)
【Q&Aさまざまな疑問にお答えします 
はやりの病気にかかった後は〜登校(園)の目安〜
インフルエンザ〜予防のために〜
診察室から〜咳、ゼーゼーがでる子がすくなくありません〜

流行状況 サーベイランス インフルエンザ ライブラリー

 インフルエンザ  (2005.11.4.改訂)
 寒くなると風邪ひきさんが増えてきますね。どうして冬になると風邪をひきやすいのでしょうか?それは、寒さで鼻や気管粘膜の血液循環が悪くなり、粘膜表面の繊毛運動が鈍り、病原体が外に排除されにくくなるためだと説明されています。さらに、冬の低温と乾燥した空気は病原体(とくにインフルエンザウイルス)の生存にとって好都合のようです。

 インフルエンザは風邪の親玉です。突然に発病し、高熱がでて倦怠感や関節痛などの全身症状が強いのが特徴です。「風邪は万病のもと」といわれますがインフルエンザにかかると、乳幼児では気管支炎や肺炎、熱性けいれんや脳症、中耳炎を合併することがあり油断できません。疑わしいと思ったら、早めに医療機関を受診しましょう。診断のひとつに、鼻や口の中を綿棒でこすって得られた分泌物で、ウイルスを検出しその場で診断できる迅速検査法があります。

 治療は、安静、保温、栄養や水分補給などの対症療法が基本ですが、最近、ウイルスの増殖を抑える抗インフルエンザウイルス薬が使用可能になりました。シンメトレル、タミフルなどの薬ですが、これらを発病早期(48時間以内)に使用すれば症状の軽減が期待されます。なお、抗インフルエンザ薬は1歳未満の乳児では処方できない場合があります。またこれらの薬が治療に絶対必要とは限りませんのでご承知おきください。なお、インフルエンザの際、こどもに使用してはいけない解熱剤(アスピリン、ポンタールやボルタレンなど)がありますので注意が必要です。原則としてアセトアミノフェンを使用します。

 ワクチンは有用です。自己負担で任意に接種を受けることになります。ワクチンの効果については様々な報告(日本では発熱を指標とした場合、1〜6歳未満で20〜30%の発病阻止効果、アメリカUS−ACIPのデータでは65歳未満で70〜90%の有効率など)があります。発病を100%抑えるわけではなく、重症化を予防するものとお考えください。参考までにアメリカにおいては、重症化しやすい6か月〜24か月未満のこどもに積極的にワクチンが接種されております。13歳未満のこどもは原則として4週間あけて2回接種する必要があり、12月中に2回目を終わらせておくと良いでしょう。生後6か月以降が対象ですが、強い卵アレルギーのあるかたは受けられない場合があります。また、1歳前後では他のワクチン接種とのかねあいがあり、予防接種のスケジュールを立てるのが大変かと思います。かかりつけの小児科医にご相談ください。
 ヘルペス性歯肉口内炎 〜早期診断、早期治療が大事です〜 (2005.7.4) 
 体調の悪い時など、唇(口角)やその周りに小さな水泡が出きていることがありますね。これは口唇ヘルペスという病気ですが、何回か繰り返し経験された方も少なくないかと思います。

 口唇ヘルペスは単純ヘルペス1型というウイルスが原因体です。ほとんどの人がこのウイルスに感染します。多くの場合は、初めての感染時に余り症状も出さずにすんでいます。
 しかし、乳幼児では時々、強い症状で発病してしまうことがあるので注意が必要です。38-39℃の熱がでていて、なかなか熱が下がらないなと思っているうちに、食欲ががくっと落ちて、よだれをたらす様になります。

 「なんだか変だな」と思ってこどもさんの口の中をみるとまあ大変!
 歯ぐきが真っ赤に脹れあがっていて、歯磨きなどしようものなら出血してしまいます。舌が白くなり、口の粘膜に水ぶくれができとっても痛そうです。食欲がなくて水分も取れなくなり、脱水になってしまう子もいます。

 この病気は、早めの治療(ゾビラックスという抗ウイルス薬)が効を奏します。「おかしいな」と思ったら早めに小児科を受診することをお勧めいたします。ご家庭では何よりも水分補給と栄養補給が大切です。食べる気が失せていますが無理じいせず、好きな食べ物、飲み物を根気よく、少しずつ取らせてあげてください。
 ノロウイルスと胃腸炎  (2005.2.8) 
 乳幼児では、消化管の免疫能力と働きが未発達なため、様々な原因で嘔吐や下痢の胃腸症状が出現しやすいようです。小児の胃腸炎の多くはウイルスを原因として発病しますが、なかでもノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスが代表的です。これらのウイルス胃腸炎は冬季に流行します。
 ノロウイルス感染症はこの冬(平成16年)、特別養護老人ホームでの集団感染が社会問題としてクローズアップされました。このノロウイルス胃腸炎、実は小児科領域においては以前から「お腹にくる風邪」の一つとして知られていました。今回は体力のないお年寄りで重症化したものですが、通常は水分補給や輸液などの治療で、脱水にならないように注意すれば3−4日で回復するものです。
 ノロウイルスは小型球形ウイルスの一種です。感染ルートは経口感染ですが、発病様式として以下の3つのタイプがあります。

(1)カキなどの貝類を生や十分に加熱しない状態で食して発症する場合
(2)調理などの食品業者が感染していて、その人が扱った汚染食品を食べて発症する場合
(3)ノロウイルス胃腸炎患者の吐物や下痢便から二次的に感染し発症する場合

 これらのうち(3)が集団感染として問題となります。このウイルスの感染性は強く、100個程度のウイルス量でも容易に伝染し、保育施設や学校、老人施設などの狭くて人の密集した場所であっというまに流行します。
 患者の吐物や便中のウイルスは、便所近くのドアノブや洗面台の蛇口など手の触れやすい場所に付着していることが多く、またおむつも汚染度が高いとされます。汚染物や汚染箇所に触れた場合は、十分な手洗いと消毒が必要です。専門的になりますがノロウイルスは、ロタウイルスより塩素に抵抗性が強くて飛まつ物にも多量に存在するので、厳密な汚物処理にはマスク着用、手袋着用が必要で次亜塩素酸による消毒が必要とも言われています。
 ノロウイルス感染による胃腸炎は感染後半日から2日おいて発病しますが、小児では嘔吐や下痢症状に加えて発熱がみられることがあります。およそ3−4日で軽快しますが、乳児や高齢者は脱水症状に陥りやすく重症化することがあるので注意が必要です。症状がおさまっても便中にウイルスはしばらく存在しますので油断は禁物です。
 ヘルパンギーナ  (2002.6.21)
【夏かぜの主役】
 幾多ある風邪のうち、夏場、決勝戦に進むのはヘルパンギーナ。これは、コクサッキーウイルス(A群、B群の2つがあります)が原因なんです。このウイルスのメジャーはA群、なかでもA群の2,4,5,6,10番が悪さをします(なんだかJ リーグみたいですね)。いきなり高熱で発症します。

【のどが真っ赤】・・・・・のどちんこあたりに小さな水ぶくれ
 いきなり、39℃の熱がでます。年長児はのどの痛みを訴えます。小さい子は「痛い」と言えません。不機嫌になって、食欲が落ちます。診察しますと、のどちんこの周囲に小さな水疱がみられます。

【どうなっちゃうの?】
 熱は1−3日で下がることが多いようです。のどちんこの水疱は2日ほどでつぶれて、のどの粘膜が傷つき真っ赤になっちゃいます。つばを飲み込めなくよだれがいっぱいでちゃいます。とっても痛そうです。のどの痛みは5日ほどでとれます。

【ホームケア】・・・・・脱水に注意
 のどの痛みが強いので普段の食事はとれません。喉ごしのよい、柔らかいものを食べさせてあげましょう。食事がとれなくても、とにかく脱水にならないよう水分の補給につとめましょう。
 アデノウイルス感染症  (2002.5.30)
【アデノウイルスって?】・・・伝染性の病気、ウイルスはのど、結膜で増えます
 アデノウイルスは、アデノイド(咽頭のリンパ組織、咽頭扁桃)から分離されたウイルスです。のどや結膜に感染したウイルスは、いっきに増殖して、かぜ症状を出します。

【アデノウイルスによる咽頭炎や扁桃腺炎】・・・結構きつい症状です!
 のどの痛みに始まって、いきなり40℃近い熱がでます。頭痛を訴えるこどもさんもいらっしゃいます。診察しますと、のどが真っ赤で、いたいたしい程です。扁桃腺の表面には、白い膜状の膿みたいなものが付いていることもあります(これを浸出性扁桃炎と呼びます)。高熱と、のどの痛みによる食欲不振が主な症状です。熱は5日ぐらい続くことがありますので油断できない病気です。

【アデノウイルス感染症の確定診断】・・・のどの検査で可能です
 扁桃腺に白い膜が付着した滲出性扁桃炎。これをみたら、アデノウイルス感染症を疑 います。特徴的症状からアデノウイルス感染症と診断することもありますが、のどの粘膜を綿棒でこすった咽頭ぬぐい液を用いた検査(結果がでるのに10−20分程待っていたくかと思います)で、アデノウイルス感染症かどうか、確定することも可能です。

【アデノウイルスの多様性】・・・プール熱の原因でもあるんです!
 アデノウイルスには、複数の型がありますが、その一つにのどの炎症にともなって、結膜炎を合併するタイプが存在します。このタイプのアデノウイルスは夏場に多く発 症し、プールで伝染することがるため、プール熱と呼ばれ有名ですが、正式名称は咽頭結膜熱です。眼科を受診され、診断されることが多いようですが、この病気も、先の浸出性扁桃炎と同様、高い熱がでることが少なくありませんので要注意です。

【アデノウイルス】・・・伝染性の強い病原体
 アデノウイルスによる咽頭炎、扁桃炎の感染力は強く、体力の消耗も少なくありません。ですから熱が下がったといって、すぐ登園、登校するのは望ましくありません。あと2日ぐらいは休んだほうが良いと思われます。プール熱の場合は、目やにを介して伝染することがあります。タオルの共用などは避け、周囲の人は手洗いを心がけましょう。
 伝染性紅斑(りんご病)  (2002.5.13)
一般に「りんご病」と言われておりますが、正式には伝染性紅斑という病名です。
症状:日焼けにしては、顔がまっかだわ!
  お顔に発疹が出現します。日焼けにしては、赤みが強い。1−2日でりんごのほっぺになっちゃいます。腕や太ももにもレース状の発疹が見られます。でも、こどもさんは、いたって元気。
経過:園や学校はお休みしなくちゃいけないの?
  りんご病は、パルボウイルスが原因の伝染病。発疹がでた時には、もう伝染性はありません(発疹出現の約1週間前に、伝染性があります。誰かにうつしちゃったかもね)。発疹がでていても、こどもさんが元気なら登園や登校は可能です。発疹はおよそ1週間で消えていきます。
注意点:かゆいの?合併症はあるの?
  かゆみを訴える子どもさんもいらっしゃいます。かきむしっちゃって、湿疹ができちゃうといけませんので、かゆみ止めの内服薬やぬり薬を処方してもらうのも良いでしょう。発疹が消えかけてたのに、再度まっ赤になって、びっくりすることがあります。皮膚は敏感になっていますので、しばらく直射日光にあたらないほうがよいよう です。 まれに、関節炎を合併します。足が痛いなどと訴えた場合は診察を受けましょう。
 伝染性軟(みずいぼ)〜水いぼとプールに関する見解〜
【その1】 いわゆるいぼについて
 小児における、いぼの種類はそう多くはなく、尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい=いぼと呼ばれるもの)か、伝染性軟属腫(水いぼ)かのどちらかです。どちらもウイルス感染症で、ウイルスが皮膚の細胞の中で増殖して発症します。ウイルスは人から人へ伝染します。尋常性疣贅は、いつどこで誰からうつったかわからない場合が多いのですが、水いぼは、兄弟間でうつったり園や学校でごく小さな流行がみられたこともあって、伝染性軟属腫というやっかいな名前がつけられました。小児においては、これら2つのうち、水いぼのほうが多くみられます。

【その2】 水いぼの伝染性について
 水いぼは、主に肌と肌の接触によりうつりますが、その他タオルなどの物を介して感染するとされます。その伝染力はけして強くはないと考えられます。具体的に、インフルエンザと比較してみましょう。インフルエンザウイルスは、飛まつ感染で1人がくしゃみをすると近くにいた人の何十人が感染し、集団流行してしまいます。一方、水いぼは、体の接触で伝染するので1人から1人への感染で済んでくれます。大流行することは考えにくいのです。また物を介しての伝染に関していえば、水いぼウイルスの付着していると思われるタオルなどを共用しなければ、感染は防げます。

【その3】 水いぼの特徴と経過について
 水いぼは、最初は粟粒大の半球ないしドーム状の丘疹ですが、時間の経過とともに大きくなります。しかし、せいぜい1ないし5mm程度で成長が止まります。大きいものの中心にはくぼみが見られ、押しつぶすと粥状のものがでてきます。引っ掻いてしまうため、体のあちこちに広がる場合があります。水いぼは治癒していくもので、1年経過をみると95%近くの人が自然治癒し、発症から平均6−7か月で治癒するという報告があります。一方、尋常性疣贅の場合は、経過は一定せず、個人差があり数か月ないし数年に渡って大きくなることがあり、実は水いぼよりやっかいなのです。

【その4】 水いぼの子どもはプールに入ってはいけないのか?
 水いぼはウイルス性の感染症ですが、インフルエンザやみずぼうそうなどと同類なものではなく、流行性疾患と位置づけするには無理があります。水いぼのこどもさんがプールに入れてもらえないという話を耳に致しますが、これはいかがなものでしょうか。確かに、昔はスイミングスクールで水いぼが多発し問題になったことがあります。この問題を検討された方がいて、これによるとスイミングスクールの子どもさんの水いぼにはある特徴がありました。それは、水いぼがわきの下に好発していたことです。これは、ビート板がウイルスを媒介していた可能性を示唆するものでした。現在、ビート板の衛生管理が良くなったためか、スイミングスクールでは水いぼの問題があまり聞かれません。幼稚園や保育園では、プール遊びでビート板を使うことはあまりないと思います。プールの水の中に水いぼウイルスが存在するかは、明確なデータは見当たりません。水いぼは主に、肌と肌とのふれあいで感染する可能性があるわけです。プールだけが感染の場ではないわけです。確かにプールでの体の接触の機会は少なくはないと思います。でも考えてみましょう。さっきまでみんなと一緒に園庭で手をつないで遊んでいたのに、プールの時間だけ独り見学に回されたとしたら、何故だか理解できない子どもにとっては、大変辛いものがあると思います。

 以上のことを十分検討した結果、わたしたち小児科医は、水いぼの子ども達のプール禁止には賛同しかねる、という結論に至りました。親御さんだけでなく、プールの可否を判断される学校・幼稚園・保育園・スイミングスクールの責任者の方々にも、このことをよくご理解いただきたいと思います。

以下追加:(2005.7.11)

 日本臨床皮膚科医会の学校伝染病第3種「その他の伝染病」に関する見解(平成16年12月)の中で、水いぼについて、

「幼児.小児によく生じ、放っておいても自然に治ってしまうこともありますが、それまでに長期を要するため、周囲の小児に伝染することを考慮して、治療します。プールなどの肌の触れ合う場ではタオルや水着、またプールのビート板や浮き輪の共用を控えるなどの配慮が必要です。この疾患のために、学校を休む必要はありません」

と述べられています。これは、みずいぼがあるがためにプールが禁止されるものではないと解釈されます。
 感染性胃腸炎
 この風邪の病原体(ウイルスと考えられます)は、のどではなくて消化管(胃腸)で悪さをします。胃症状として胃の動きが悪くなり、吐き気・嘔吐が出現し、ついで腸症状として下痢がみられます。風邪ですから、初期に発熱や頭痛をともなうこともあります。症状の強弱は個人差があるようです。軽い吐き気や一回の下痢ですむ人もありますが、典型的な場合、頭痛とともに38度くらいの発熱があり、吐き気とともに食べたものが消化されずに、突然の嘔吐がみられます。つらい時期は、1−2日であまり症状は長く続きませんが、初期の嘔吐や食欲不振が強いと、水分不足の脱水になってしまうこともあります。また、乳児では白っぽい便の下痢症状が長く場合もあり、この場合も脱水に注意が必要です。嘔吐が止まらない、顔色がすぐれない、水分も取りたがらない、尿の量が少ない場合は脱水になってます。医療機関の受診をお勧めいたします。
 溶連菌感染症
 この病気は、溶血性連鎖球菌(略して、溶連菌)という細菌が原因で、のどに炎症をおこします。治療法としては、菌を退治する抗生物質が有効です。熱とのどの痛みが主な症状ですが、時に頭痛や腹痛があります。子供さんの舌を見ると、表面が赤いブツブツになっていてイチゴみたいに見えます。症状が進むと、赤く細かい発疹が首、体、ふとももに広く出現します。こうなれば典型的な溶連菌感染症です。また、回復期には手や足の指先から皮がむけてくることもあります。
 この病気は集団感染や家族感染をおこします。兄弟姉妹への伝染性が強いので、発病したら家族の子供みんなで診療を受ける必要があります。合併症としては、まれですが、血尿さらには腎炎があります。合併症の有無の確認のために尿検査を受ける場合もあります。
 この病気は早期診断、早期治療がだいじです。特有の発疹が出ずに発熱、のどの痛み、腹痛や頭痛のみで発症することも少なくありません。疑わしいと思われたら、早めに小児科を受診しましょう。医師は症状をみて診断しますが、今はのどのぬぐい液を用いた迅速検査法が普及していますので、10分程度で溶連菌の有無を知ることができます。
 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)  (2005.7.11.改訂)
 おたふくかぜでは頻度は少ないものの(12−23万人に1人の割合)、高度の難聴になってしまうことが知られております。このため予防接種を受けることをおすすめいたします。とくに成人や小学生では、おたふくかぜにかかると症状が重くなることがあります。流行地域にお住まいで、かかった覚えがない方は是非予防接種をお受けください。くわしくは、かかりつけの医師にご相談ください。
 水痘(みずぼうそう
 水痘(みずぼうそう)は水痘ウイルスが原因です。だるそうで「風邪かな?」と思っていると、赤い小さな発疹が額や頭そして体に出現し、発疹は水をもった水疱となります。水疱は、体の中心部から手足など末端部へ向かって拡がることが多いですが、程度には個人差があります。皮膚症状以外に、熱が出ることもあります。水疱が口の中に広がった場合、食欲が落ちます。水分の摂り方が足りないと脱水になることもあります。おしっこの回数や量が少ない・元気がない・顔色が悪いなどの脱水症状がでた場合は、早く小児科を受診しましょう。水疱はアズキの皮のようなかさぶたになって治っていきますが、個人差はあるものの、およそ1週間位かかるようです。
 治療として、皮膚症状に対しては軟膏を塗って水疱内のウイルス拡散を抑え、同時にかゆみ止めの内服薬を併用することになります。最近では、水痘ウイルスの増殖を抑えて重症化をふせぐゾビラックスと言う内服薬も登場し、全例ではありませんが使用されるようになりました。
 なお、水痘予防接種(任意接種:希望者がうける)もあります。小さい子供さんだけではなく、中高生や成人でこれまでにかかったことのない方には、予防接種をお勧めします。成人の場合、発症すると子供よりも重くなることが多いので、子供さんがかかったときにうつると大変です。お父さんお母さんは、水痘にかかったかどうかをお確かめください。予防接種についての詳しいことは、かかりつけの医師にご相談ください。

 はやりの病気にかかった後は〜登校(園)の目安〜 
りんご病(伝染性紅斑)と診断されましたが、登園(登校)してかまわないでしょうか??
 りんご病は、幼児から小学生を中心に流行する病気です。パルボウイルス感染が原因で、ほっぺのりんご様発疹と、腕や太もものレース様の発疹が主症状です。この病気の登園、登校のめやすですが、発疹は、ウイルスに感染してから2週間ほど経過してから出現するもので、発疹に気づかれた時には、すでにウイルスの排せつは終わっており、伝染性はなくなっております。したがって、発疹がでていても、こどもさんが元気であれば、登園や登校に支障はありません。
 手足口病と診断されましたが、登園(登校)のめやすは?
 手足口病は、手足に小さな水疱性発疹に口内炎をともなうウイルス性の流行病です。手足の症状や口内炎はおおよそ、5〜7日で消退します。しかし、患者さんの便からは、少なくとも2〜3週間は病原体ウイルスが排泄されております。すなわち、手足口病の症状が消えたとしてもその後、数週間は感染性があるということになります。このため、発疹の消失をもって、登園(登校)を許可する意味はありませんし、逆に感染性のあるなしを根拠に登園(登校)停止することは、実際的ではありません(だって2−3週間も登園、登校できなかったら大変ですよね)。一般に手足口病は、軽症で経過することが多いので、登園(登校)の目安は、本人の健康状態次第で判断されます。発病2ないし3日で元気になりますので、そのへんが登園(登校)の目安となりますが、できれば主治医の判断をあおぐのがベストと思います。<感染症委員会>
 インフルエンザだと診断されました。いつから学校へ行ってよいんでしょうか?
 規則には「解熱した後2日経過するまで」休みなさいということになっています。つまりほぼ平熱になってさらに丸2日間は静養して、3日目から出かけなさいということです。えっそんなに長く休むのかしら、早く勉強させないといけないのに、…ですって?では問題です。勉強と健康とどっちが大事でしょう?答え、健康です。ーはい、正解です。よくできました。よろしいでしょうか?たてまえだけでなく、いまこそまさに、そのときなんですね。「風邪は万病のもと」というではないですか。インフルエンザではかなり体力消耗してますからゆっくりさせてあげましょう。もちろん事情さえ許せば、罹患なさった大人のみなさまも、できれば…です。<長岡中央綜合病院 郡司哲己>
 水痘=水ぼうそうはいつから登校・通園してよいのか目安を教えてください。
 「発疹がすべて痂皮化したら」登校してよいのだと規則にあります。これは「痂皮化」とは「黒いカサベタになったら」という意味です。さらにはもちろん新しい水泡や発赤が生じていないこともたいせつなことです。黒く乾いたカサベタの周りがほとんど赤みがなくなっていることもめやすのひとつでしょう。なおっためやすは、だいたい「出始めから7日から10日」が原則でしょうね。ゾビラックスの抗ウイルス剤を早期から5日間ほど内服すると4−5日間でこんな軽快状態になることも多いです。昔はこの「黒いカサベタ」が全部落ちて少しはげてふつうの地肌になるまでは感染するので登校停止とされていましたが、最近ではもっとはやくてもOKということになりました。<長岡中央綜合病院 郡司哲己>
 流行性耳下腺炎(ムンプス)では、なおってから幼稚園・学校に行ってよい目安はどうなっているんですか?
 じつはこれがすこし難しい問題があるところなんですね。「耳下腺の腫脹が消失するまで」学校伝染病第2種の記載には規定がこんなふうになっています。たしかに多くのこどもたちは5−7日間で痛みも腫れもなくなるんです。でもすごく腫れたこどもでは2-3週間以上軽度の腫れが残ることがときどきあります。このこどもが通学・登園してはほんとうにいけないのでしょうか?わたしの考えるめやすは(1)親の目で見てもう腫れていない(2)さわっても全然痛がらない(3)最低でも発症から7日間は経過しているこの3ポイントが合格なら、いくら医師がていねいに触診するとまだ腫れているとしても、もう「オマケ」して通学・登園していただいてもよいと思います。<長岡中央綜合病院 郡司哲己>
 インフルエンザ〜予防のために〜
 インフルエンザは、かぜの中でも悪玉の代表です。感染すると、1−2日のうちに頭痛、関節痛、倦怠感、のどの痛みではじまり、発熱は2−5日続き、回復には1週間かかります。お年寄りや、呼吸器等の持病をもっている人では肺炎を併発したり、特に、こどもさんでは、けいれんをおこしたり、まれに脳炎や脳症に進展してしまうこともあります。インフルエンザにかからないにこしたことはありません。一般に12月末から2月に発症のピークをむかえます。流行の兆しがあったら、以下のことに留意しましょう。できるだけ人ごみをさけ、帰宅したらうがい、手洗いにつとめ、無理したりや睡眠不足にならないようにしましょう。また室内の換気につとめましょう。加えて、インフルエンザに罹患しても軽くすむために、予防接種が良いとされています。これからは、インフルエンザの予防接種についてQ&Aでご紹介いたします。
 インフルエンザワクチンはいつうけるの?
 流行は早ければ12月に始まります。ワクチン接種から抗体(免疫)ができるまでに約2週は必要ですので、予防接種は12月中に終わらせておくのが良いでしょう。
 ワクチンの予防効果はどのぐらい持続しますか?
 小児は2回、13歳以上のかたには1回の接種が推奨されています。これにより、免疫効果(抗体値)は5か月持続するとされています。
 去年インフルエンザの予防接種をしましたが、今年は受けなくてもよいの?
 インフルエンザウイルスは毎年、形をかえて流行します。そのため去年のワクチンが今年のインフルエンザに有効と限りません。ワクチンの効果が5か月と短いこともあわせて考えれば、毎年の予防接種が免疫の獲得には重要と考えられます。
 去年のワクチンと今年のワクチンは、違うの?
 毎年インフルエンザは形を変えています。今年流行するインフルエンザについては、国立感染症研究所が世界各地でみつかったウイルスの分析にもとずいて流行予測をして株の決定をしています。今年のワクチンは去年のものとは異なります。
 ワクチン製造に卵を使っていると聞いています。卵アレルギーの子には接種できますか?
 ワクチンを作る際。鶏卵を使用しています。そのため、ごく少量の鶏卵成分がワクチンに含有されます。その後ワクチンは高度の精製が加えられます。まず、問題はないと思われますが、卵を食べたり卵を含む食品を食べて、強いアレルギー症状(たとえばくちびるが腫れる、じんましんがでて、呼吸困難に陥った)のある人には慎重を要します。この様な人は、主治医に相談されることをおすすめいたします。ワクチンの効果や副作用について質問があれば、かかりつけの小児科医に相談されるのがベストでしょう。
 診察室から〜咳、ゼーゼーがでる子が少なくありません
 かぜの3大症は、熱、咳、鼻水です。寒くなってくると、のどや気管支を痛めるウイルスや細菌がはびこってきます。この季節、かぜの3大症状のうち、注意しなければいけない咳症状について解説します。
 かぜかなと思っていたらケンケン咳になり犬がほえる様な咳になりました。様子をみてよいでしょうか?
 これは、咳のなかでもあまり好ましくない症状です。かぜの咳は、のど(上気道)から気管支(下気道)のどこかで炎症がおこると出現します。ケンケン咳、犬の遠吠えのような咳は、気道の中でもっとも細い部分の声帯(のどぼとけー声を出す部分)が、炎症をおこし腫れている時に出現します。声帯が腫れると普段とちがってハスキーな声になり、1−2日の内に犬吠の咳が出た場合、注意が必要です。
 主病変の声帯は、肺へ空気を送りこむ気管支の入り口にあたります。炎症、腫れが進行すると肺に空気が入りにくくなるため呼吸困難におちいる場合もあります。これを仮性クループと呼んでいます。子供さんが、夜間寝ている時、息がグーグーいって、とっても苦しそうになった場合には、早めに小児科を受診しましょう。
 ケンケン咳ではないのですが、咳がなかなかとまりません。くるしそうではないのですが、呼吸する時ゼロゼロいっています。
 この場合、病原体がのどから下気道の気管支に炎症をおこしている可能性があります。空気の通り道である気管支が腫れていて、痰がからんでいますので、呼吸の際、胸にゼロゼロ音がきかれます。この音が気管支喘息に似ていますので、喘息様気管支炎と呼んでいます。
 この喘息様気管支炎にかかると、気管支喘息になるのですか?
 喘息様気管支炎は、気管支が敏感で炎症が起こった際に、痰が出やすい体質の子供さんに発症します。なかなか、なおりにくい様ですが多くはアレルギーと関係なくおこってきます。喘息様気管支炎イコール喘息ではありません。そうは言っても、気管支の炎症が長引きますと、気管支の傷が大きくなり喘息の素地を作らないとも限りませんので、小児科医のもとで、しっかりと治してもらうのが得策です。

学校伝染病」とは
 学校保健上こどもたちにその病気が感染、流行しないように「学校保健法施行規則」で決まっている出席停止処分がありうるいくつかの感染症です。(ちょっと解説がむずかしいことばになりましたね。)第1種、第2種、第3種とあります。これは感染症新法(平成11年4月施行)の伝染病分類と同じような区分です。第1種はコレラ、ペストなどまずみなさんとは一生ご縁のない重い病気。第3種は有名になったO157の腸管出血性大腸菌感染症と流行性結膜炎(はやり目)、およびその他(学校長が指定できる)。第2種がおおいに関係するのですべて書き並べてみましょう。よくあるものではインフルエンザ、流行性耳下腺炎、水痘、風疹、咽頭結膜熱(=プール熱=アデノウイルス咽頭炎)およびめったにはないものでは麻疹、百日咳、結核。

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