歌・俳句
(2002/1/14)





さしあたり使ふ当てなき縄を綯ふ


初釜の躙り口にて閊へをり


押せぬほど重くなりたる雪まろげ


かんじきの穿きて暫しの身の軽さ


雪叩きこころに重きことのある


豆撒きのすぐあと鬼の拾ひけり





○ さしあたり使ふ当てなき縄を綯ふ     中原道夫・選  「銀化

さしあたりつかうあてなきなわをなう
季語・縄を綯ふ 冬
 農家の伝統的な、ただし廃れてきている藁から縄を作る冬仕事。「泥縄」泥坊を 捕まえてから縄を綯うという諺がありますね。その前にまあ、というおふざけの含意も。


 
○ 初釜の躙り口にて閊へをり     中原道夫・選  「銀化

はつかまのにじりくちにてつかえをり
季語・初釜 冬(新年)
 初釜は新年初めての茶の湯の催し。どうも作法にやかましいので、蒼穹はただでも気が重いのでした。おまけに茶室への入室は手を付きにじって入るしきたりがあるとのこと、これがおデブの蒼穹にはまた辛いのです。というわけで心も体もともに入口でつっかえてしまいました。


○ 押せぬほど重くなりたる雪まろげ     黛 執・選  春野

おせぬほどおもくなりたるゆきまろげ
季語・雪まろげ 冬
 雪まろげ(雪転げ)転がして作った大きな雪玉のことです。ふたつ重ねると雪だるまになります。


 ○ かんじきの穿きて暫しの身の軽さ     中原道夫・選  銀化

かんじきのはきてしばしのみのかるさ
季語・かんじき 冬
 かんじきはご存知でしょうか?雪国越後では雪上歩行の必須アイテムでしたが、近年は見ないですよね。雪靴やゴム靴にかんじきを縛り付けると雪の上で沈まなくなるわけですな。おデブの蒼穹でも雪の上を歩けます。


○ 雪叩きこころに重きことのある     大串 章・選  百鳥

ゆきたたきこころにおもきことのある
季語・雪たたき 冬
 雪駄、下駄などの裏にごっそりとへばりついた雪の塊を叩いて落とすことが雪叩きです。この物理的重さと心のおもさを二重意味化したわけです。


  ○ 豆撒きのすぐあと鬼の拾ひけり     黛 執・選  春野

まめまきのすぐあとおにのひろいけり
季語・豆撒き 冬
 節分です。「福は内、鬼は外」と家庭でも豆撒きをしますね。その撒くすぐ後ろを鬼が歩いて回り、次々と拾って食べてしまいます。 「なかなかこの炒り豆はうまいな。遺伝子組み替えではない国産大豆だな。」