<大パンダ>


 第5景  「溶連菌のヨーデル」 (2001.12.6)

  外来診察が正午を過ぎた頃、電話がありました。
「眼科のKですが…。」
「ああ、ごぶさたで−す。どうされました?」
  その眼科医院に勤める看護婦Hさんのお子さんが、きょうの午前にわたしの外来に受診予定だったとのことです。その日の他の看護婦さんの勤務の兼ね合いで、どうしても午後でないと受診できないとの連絡でした。もちろんOKです。
  事務にお願いして、午後の専門外来予約に混ぜ込んでもらい、たかちゃんとお母さんの登場です。
「やめてって言うのに、K先生ったら面白がって、電話しちゃったんです。どうもすみませーん。」
咽頭痛と顎のリンパ腺が腫れた一年生のたかちゃんの診察です。
  きのうはもっと「こぶとりじいさん」のようにもこもこに腫れていたそうです。
「そう、それで首がよく動かなかったんだよね。」
「これはね、喉の赤さと苺舌からすると、きっと溶連菌感染症ですね。」
  突然、たかちゃんが大きな声で歌いました。
「ヨウレヒ、ヨウレヒ、ヨーウレーンキン。ぼーくはー、ヨーウレーイヒー。」
「ああ驚いた。駄洒落ソングですな。」
「すみません、こういう子で。」と苦笑のお母さん。
…息子は母親に似るというものねえ、とわたくしは心の中で呟きました。
  じつは結婚前まで病院小児科の「明るい看護婦」さんでした、彼女は。ついでですがK先生も同じ病棟で働く眼科医でした。彼女の再就職はその明るさを買われたんだろうな、とわたしは思っています。