<ストップ!!稲わら焼却!!>        (2001.8.9)
見附市 はしもと小児科  橋本尚士

 それにしても,今年の夏は暑いですね.いくら暑いと言っても, 9月,10月がやって来ます.秋は気管支喘息の好発時期で,これからゼイゼイするお子さんが増えて来ます.

 なぜ秋に気管支喘息が起きやすいかについては諸説ありますが,
 (1)季節の変わり目で低気圧が行ったり来たりする
 (低気圧が来る前に発作を起こすお子さん,低気圧が行った後に発作を起こすお子さんがいます),
 (2)稲わら焼却などで大気中に粉塵などが増加する
 (新潟平野に煙が充満した翌日,翌々日には発作を起こしてしまうお子さんが増えます),
という2点は重要な原因と考えられます.

 低気圧の行ったり来たりは自然現象ですから,人智の及ぶところではありません.しかし,稲わら焼却は人為的なものなので,なんとかすることができます.

 新潟県では,平成5年に,「新潟県稲わら等の適正処理に関する指導要領」を定めました.平成12年度は,平成12年8月20日から10月31日までを県下統一の稲わら焼却制限期間と定めて,啓発活動,巡回指導を実施しました.

 平成13年4月に「廃棄物の処理および清掃に関する法律」が改正されました.この法律の改正施行により,稲わらを焼却する行為は法律で禁止されました.現在,稲わらを焼却することは明らかな違法行為です.

 平成13年8月21日,新潟県農産園芸課長は農政事務所長あてに通知文を出しました.このなかで,(1)政令第14条による例外規定で,稲わら焼却が農業を営むためにやむを得ない焼却と安易に解される向きもあるが,稲わらについてはすき込み,収集利用など焼却によらない処理方法があることや,焼却が病害虫の大発生等の駆除のために行われている実態ではないことから,煙害を考慮すれば,稲わら焼却は公益上から農業を営むためにやむを得ない行為とは考えられないこと,(2)農業を営むためにやむを得ない焼却とは,ウンカ・ニカメイチュウ等の特定の病害虫の大発生などで,農薬散布など他の方法よりも公益上有効な場合が想定されるが,このような事態においても,県としては市町村等に防除・栽培上の技術的助言を行い,真に有効な方法であるかどうかの的確な指導を行うことが重要であること,(3)市町村・農業団体等と一体となって推進している環境保全型農業において,稲わらは最も効果的な有機質資源のひとつであり,すき込みのみならず,収集での家畜排せつ物との堆肥化などの循環利用による,土づくりのへの活用を積極的に推進するものとすること,と述べています.

 気管支喘息のお子さんは発作を起こさないように,1日2回お薬を飲んだり,吸入療法をしています.毎日のことなので,お子さん本人も親も大変な労力を注ぎ込んでいます.稲わら焼却で煙が大量発生すれば,煙の刺激で発作が誘発されてしまい,医療機関を受診して点滴を受けたり,入院をしなければならなくなり,せっかくの努力が水泡に帰してしまいます.稲わら焼却をやめることは,お子さん方の気管支喘息の発作を減らすことに確実に貢献します.

 どうか,農家のみなさん,稲わらを焼却せずに田んぼにすき込んでください.すき込みは手間がかかりますが,やがては地味が肥えておいしいお米ができます.是非お願いします.
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