「地震や水害にあった母乳育児中のお母さんへ」
母乳育児中のお母さんは母乳育児を続けましょう
 このような状況で母乳育児を続けることはとても重要です。母乳育児は赤ちゃんの命を救います。母乳育児は完全無欠の栄養を赤ちゃんに与えます。さらに、母乳の中の感染防御因子が、非常事態で流行する可能性のある下痢や呼吸器感染から赤ちゃんを守ります。一方、安全な水や、お湯を沸かす燃料のない場所での人工乳の使用は、栄養不良、疾病、乳児死亡のリスクを高めます。母乳育児を続けることで、お母さんも子どもも慰められ、心の支えが得られます。

ストレスで母乳が干上がることはありません!
 極度のストレスや恐怖で一時的に母乳の出が悪くなることはあっても、それは一過性のものです。母乳育児をすると、お母さんも子どもも落ち着き、実際に緊張が和らぐようなホルモンがつくられるという医学的根拠が証明されつつあります。一時的に出が悪くなっても、赤ちゃんが欲しがるたびに欲しがるだけあげているとまた母乳は出てくるようになります。

栄養状態のよくないお母さんの母乳にも、完全な栄養が含まれています!
 母乳の栄養はいつでも完全です。お母さんが深刻な栄養失調にかかったときのみ、母乳の量が減ります。とはいえ、災害時は授乳中のお母さんが十分な栄養をとれるよう、人工乳の配給よりも、お母さんのための食べ物や飲み物を優先的に確保するようにしましょう。お母さん自身が少しでも体を休めてリラックスし、きちんと食べて十分な水分を取るように気をつければ、母乳の出をよくすることができます。

下痢の赤ちゃんでも母乳は続けられます!
 母乳の中には免疫が含まれています。母乳で育てられていて、極度に下痢をしている赤ちゃんで、脱水症状がある場合は、医療を受ける必要があります。その場合も、母乳育児はやめたり減らしたりするべきではありません。非常事態では水が汚染されることが多く、哺乳びんやおしゃぶりも汚染されていることが多いので、注意が必要です。母乳だけで育っている赤ちゃんにおしゃぶりは必要ありません。

一度は母乳育児をあきらめた人も、必ず再開できます!
 母乳復帰の方法を用いれば、お母さんが母乳育児を再開することは可能です。母乳復帰をすれば、非常事態において、生命を救う栄養と免疫面での恩恵が得られます。これまで混合で、人工乳をたくさん飲ませていたお母さんも、授乳の回数を増やし、赤ちゃんに何度も吸ってもらうようにすれば、母乳の量を増やすことができます。

母乳が足りないのではないかと思ったら、便や尿を確認しましょう
 月満ちて生まれた健康な赤ちゃんは、生後3,4日ころから1日に6−8回の尿をします。(紙おむつなら5−6枚)。生後6−8週間くらいまでは、1日に3−5回の便がでます。欲しがるだけ欲しがるたびに乳房を含ませましょう。新生児は1日8ー12回飲むのが平均ですが、もっと飲む赤ちゃんもいます。赤ちゃんが欲しがるたびに授乳できていて、赤ちゃんの肌の色つやがよく手足をよく動かしていて、いつものように便や尿が出ていれば大丈夫です。
2004年10月30日作成:
■■災害時の母と子の育児支援 共同特別委員会■■
   ★日本ラクテーション・コンサルタント協会 (JALC)
   ★ラ・レーチェ・リーグ(LLL)日本
   ★母乳育児支援ネットワーク日本(BSNJapan)
●なお、日本ラクテーション・コンサルタント協会とラ・レーチェ・リーグ日本では、被災された方のために無料で母乳育児相談に乗っています。
■■問い合わせ■■
  (援助者向き): contact@jalc-net.jp(日本ラクテーション・コンサルタント協会)
  (被災されたお母さん専用): hisai_support@llljapan.com(ラ・レーチェ・リーグ日本)
■■参考資料■■
WABA:「グローバル化」時代の母乳育児 2003年
BFHIニュース、ユニセフ 1999年9月/10月
WHO/ユニセフ「乳幼児の栄養に関する世界的な戦略」2003年(2004年訳)
ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル「月満ちて生まれた健康な母乳育ちの赤ちゃんが、母乳がたりているかどうかを見分ける方法」(2003年改訳)