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 子どもとタバコ
柳本 利夫
 禁煙しろと言われてもやめられない成人はともかく、子どもは絶対タバコを吸っちゃいけない。これは皆さんも同意するところと思います。しかし、最近、受動喫煙ということが注目されてきました。タバコをすわない人が、自分の意志とは無関係にタバコの煙を吸ってしまうということです。タバコの火のついた部分から立ちのぼる煉は喫煙者本人が吸う煙より刺激が強く、有害な物質が多く含まれています。そして、このような有害物質による身体の反応は、たばこを吸わない人のほうが強くあらわれます。
 タバコを吸う人は自分自身だけでなく、配偶者や子どもの肺がん発生率を高めます。狭心症や心筋梗塞の危険も高めています。喫煙者のいる家庭では、赤ちゃんの尿からニコチンが検出されます。知らないうちに子どもの身体はタバコの害におかされています。喫煙者がいると乳幼児突然死症候群の発生頻度が高くなります。喘息や肺炎、気管支炎が増えますし、かぜをひきやすくなり、中耳炎になりやすくなり、歯肉の色が悪くなることも知られています。最近では、身長の伸びが悪くなる、知能の発達が悪くなるというデータもあります。
 家の外で吸うから大丈夫と考えている方もいらっしゃると思いますが、研究によれば、家族が屋外で吸っていても子どもの体内からはニコチンが検出されるそうです。外で吸ってもダメということです。この理由として、喫煉者のはく息が原因であると推測されています。実際に喫煙者のはく息には一酸化炭素を初めとする有害物質が含まれており、1本のタバコを吸ってから最低8時間は排泄されているそうです。喫煙者は子どものそばで息をはかないようにしなければいけませんね(実際には無理ですが)。また、家で子どものいない時間帯に吸った場合も、ホコリなどに付着したニコチンが子どもに影響を与えることもわかりました。ホコリだけでなく、カーペット、家具、カーテンそして衣類に有害物質は貯蔵されるのです。台所の換気扇の近くで吸っても防止効果はなく、空気清浄機はタバコの煙の有害物質をほとんど除去できず素通りするので、あまり期待ができないそうです。
 受動喫煙と知的能力については注目されており、微量の受動喫煙で読書力と推理力に関する成績が低下するそうです。子どもたちの活動する場所(学校やスポーツ施設など)での全面的な禁煙は必須です。
 幼い時期からたばこの煙にさらされる生活環境は、子どもの健全な発育や将来の健康にとって大きな脅威です。子どもの受動喫煙に結びつくような行為は、子どもの身体と知能を傷つける虐待行為と言っても過言ではありません。