4)絵本のすすめ
荻田 安時
こどもが生まれると、なんとなく絵本を読んであげたくなるのが自然です。最初は読んであげなくちゃいけないと思うかもしれません。私も読まなければいけないんだって思い込んでいました。一番初めに読んであげた絵本は、大人が考えたデザイン優先の赤ちゃん絵本。First look(はじめてのかたち)一Beginning for babies。型抜きした三つ折りのカードを使って、白と黒の丸・三角・四角という基本的な形の組み合わせや大きさの変化を表現した絵本です。赤ちゃんの視覚は黒い色から理解するので、文字が無くてもひらひら見せてれば良いのだよと何処かで聞いて、釈然としないまま結局シリーズで10冊も読みました。いないないばあで、きゃっきゃっ笑顔が出る頃には、あかちゃんのあそびえほんシリーズ“ごあいさつあそび”木村裕一著(偕成社)が新米パパママには良いんじゃないかな。購入した時はわからなかったけど、この作者あらしのよるにシリーズの大ベストセラーをこの後書いています。でもこの時点では解らない。そんな将来大ベストセラーを出す作家さんも、はじめは絵本からスタートする人もいます。
最初は読んであげると、こどもが、ぎゃはは、と笑うのが楽しくて楽しくて。でも何冊も読む方は眠い眠い。新米パパの私はとんでもない事をしでかしました。絵本はひらがなで書かれているものなのに、絵と字の空いている行間に漢字でルビをふりました。ごあいさつあそびから、ももたろうまで漢字を書きました。赤ちゃんの絵本には余白が多く、その空間で赤ちゃんとやりとりして遊び、お互いの心の栄養にするのが楽しいはずです。基本は文字無しの絵だけでも物語を楽しめます。文字は絵と響き合って物語のイメージを広げていくもので、絵本の製作過程で作者がそぎ落とし、選び抜かれたものになります。絵本はこどもが文字を覚えるために読むものではありません。親と共に豊かなイメージを楽しむのです。文字が無いから、文字が少ないから、読むところが無いのではありません。絵が全てを物語っています。私のそんな失敗も今だから言える御愛嬌です。
誰もが勧めする名作のエリック・カール“はらぺこあおむし”もこどもは、すぐ好きになったのに私は10回ぐらい読んで、やっと面白さが解りました。絵本はページをめくる時に、前のページの残像を引きずりながら次のページに行き、また戻りたい時に前のページに戻れるのが理想と思います。絵本を選ぶ基準の中に後ろのページから読んでもおかしくない絵本もあると思います。ですからミッフィやうさこちゃんのシリーズは行間を楽しむ絵本ですので、こどもにとっては純文学なんでしょう。
こどもは絵本が大好きです。絵本を投げたり、齧ったり舐めて遊びます。大好きな人と一緒に過ごす大事な時間と空間の世界です。だからこそ赤ちゃん以上に、大人も絵本が大好きになるはずです。また絵本の原画を見る機会があれば、作家がどんなに色を工夫して書かれるか、その苦労が判るとより絵本を読むのが楽しくなります。限られたインクを使用する印刷ですので原画の素晴らしさには、かないません。好きな作家さんができ、機会があれば、原画を購入できたら宝物になります。
まずは1冊読み、そして繰り返す事。何を読んでよいかわからない時は、福音館のこどものともの012がお勧めです。月刊誌1冊410円のお値段で色々な世界が楽しめます。自分の殻から出られず、購入できない絵本も自然に読めます。この本がお勧めって人に言われ、それなりの価格で購入し面白かった絵本は私にはあまりありません。絵本ライブを聞いて、うんちやおしっこのお話で大笑いして、受け狙いで読んでやっぱり大受けして、うんちやおしっこの絵は好きでなかったのに心変りさせた絵本もあります。
本屋さんで絵本を選ぶのに困ってしまったら次の絵本紹介本をお勧めします。赤ちゃん絵本ノート(中央公論新社)、絵本であそぼ(小学館)、幸せの絵本(ソフトバンク)、絵本たんけん隊(クレヨンハウス)、絵本をよんでみる(平凡社)、小児科医が見つけたえほんエホン絵本(医歯薬出版?)色々な絵本の読み方が参考になります。
さあ、皆さんも絵本を持ってこどもと一緒に遊びましょ。