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 エイズから子どもを守るために
五十嵐 隆夫
  エイズ(AIDS)は後天性免疫不全症候群といわれ、ヒト免疫不全ウイルス感染症(HIV感染症)の最も重篤な終末像です。今から25年前にはじめて患者が発見されましたが、既に世界で4500万人以上のHIV感染者がいて、毎年新に500万人が感染し、300万人がエイズで命を奪われています。
 日本でも、昨年一年間で1165人のHIV感染者が登録されましたが、潜在的にその4、5倍の感染者がいると推定されています。特に10歳、20歳台の若者の間で急増しています。

 エイズの原因は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)でヒトレトロウイルスです。このウイルスが血液、精液、子宮頚管 子宮頚管粘液、母乳などを介して伝播します。血友病患者の治療薬として使用された血液製剤がこのウイルスに汚染されていたために多数の血友病患者がエイズとなったことは記憶に新しいところです。
 同性愛者の肛門を使った性交は感染率が極めて高いですが、異性間性交での感染者も急増しています。近年の性の解放、若年化が急増の最大の原因であり、子どもたちに対する性教育、エイズ教育をより徹底することが重要です。

 エイズはHIVに感染してから10年ほどで発病します。HIVに感染するとCD4陽性Tリンパ球数が減少するため、細菌やウイルスに対する抵抗力が弱まり、帯状疱疹、肺結核、カンジダ食道炎、カリニ肺炎、エイズ脳症などを起こして死亡します。HIV感染の初期症状は、感染1ケ月以内に発熱、リンパ腺腫大、発疹、咽頭痛、下痢などが見られますが、その後自然に回復し、10年後にエイズとして発病します。

 HIV感染は、血液検査で診断します。検査を希望する場合は、医療機関(有料)または保健所(無料)で行うことが出来ます。日本ではHIV感染の進行を抑える薬が使えます。母親が感染者である場合、母乳を介して子どもに感染しますので、母乳を与えないように注意が必要です。夫が感染者である場合、ウイルスを除去した精液で受精し、子どもをつくることも可能です。

 エイズの予防には、全ての国民がエイズの脅威を認識し、性交による伝播を防ぐ対策を講じなければなりません。性交時のコンドーム使用を夫婦間でも義務付けることがブラジルでは決められています。
 エイズキャンペーンを1時間ごとにテレビ放映して、国民一人一人にエイズ対策を徹底することが今の日本には必要なことです。