12)子育て力アップ講座 4 子どもの風邪薬の誤解(その3)

子どものころは頻繁に風邪をひきます。風邪をひいたときに使うのが風邪薬です。この風邪薬についていくつかの誤解があります。今回は急性胃腸炎の話です。

「おなかの風邪の症状」

 おなかの風邪、すなわち急性胃腸炎の症状は嘔吐、下痢、発熱です。突然の嘔吐で始まることが多く腹痛と吐き気が続き、嘔吐を繰り返します。さらに発熱、下痢が加わってきます。嘔吐や発熱は1〜2日でおさまることが多いですが、下痢はその後1週間あるいはそれ以上続き、やがて治っていきます。顔色が悪くなり何回も吐いたり、お腹を痛がって泣き続ける子どもを看病するのは大変ご心配かと思いますが、これらの症状は時期が来ると自然に治るのです。むしろ重要なのは脱水です。嘔吐や下痢で体から水分が大量に失われるからです。感染性胃腸炎で入院する子どものほとんどはこの脱水の治療のためです。脱水は口や舌の乾燥、皮膚の張り具合、おしっこの出具合などで総合的に判断します。また、まれですが感染性胃腸炎にともなってけいれんをおこすことがあります。

「おなかの風邪の原因」

 子どもの感染性胃腸炎のほとんどはウイルスによるものです。ウイルスのうちノロウイルスは12月から2月頃に多く見られ、ロタウイルスは3月から5月くらいに流行します。しかし、そのほかにアデノウイルス、エンテロウイルスなどたくさんのウイルスで感染性胃腸炎は発症します。

「おなかの風邪薬の誤解」

 感染性胃腸炎の原因ウイルスに対する抗ウイルス剤はありません。つまり原因を治す薬はないのが現状です。したがって使われている薬は多くは対症療法薬です。吐き気を和らげる薬として制吐剤がよく使われますが、まれにふらつきやめまいの副作用が報告されています。小児科では整腸剤がよく使われます。症状のある期間を約1日短縮する効果が報告されているからです。ただし整腸剤の中に微量の牛乳成分が入っているものもあり、牛乳アレルギーのある場合は使いません。下痢が長引く場合は消化酵素の力が弱まっていることがあり、その場合は消化酵素の内服が助けになります。

「ポイントは脱水予防」

 嘔吐が続くと脱水が心配という声をよく聞きます。そのご心配はまさに的を得たご判断と言えます。嘔吐や下痢は時期が来れば治るというものの、その間に脱水が進めば状態は悪化します。ご家庭で脱水に対する予防策としてぜひ取り組んでいただきたいのが経口補水液です。ブドウ糖と塩分、水分がバランスよく含まれている経口補水液を少しずつ、しかし絶やさずに与えることで、脱水が進むのを防ぐことを期待します。一般のスポーツ飲料は糖分が多く塩分が少ないため、バランスよく配合されている経口補水液を選ぶことをお勧めします。最近では、イオンバランスに配慮したレトルトおかゆも販売されており便利です。感染性胃腸炎の家庭看護は、経口補水液やイオンバランスおかゆをうまく使い、脱水を進ませずに乗り越えることが、要点と言えます。