10)子育て力アップ講座 2 子どもの風邪薬の誤解(その1)

子どものころは頻繁に風邪をひきます。風邪をひいたときに使うのが風邪薬です。この風邪薬についていくつかの誤解があるので今回はそのいくつかを紹介します。

「早く内服したら早く治る?」

残念ながら早く内服しても早く治ることはありません。風邪薬は風邪の症状をやわらげる働きはありますが、治る時期がきてようやく治るのです。薬を飲んでいるのになかなか治らない・・というのは、薬が効いていないというより、まだ治る時期になっていないことを意味します。ただし、溶連菌感染症などの細菌感染症やインフルエンザなどは抗生物質や抗ウイルス薬で早く治すことが可能です。

「咳止めは効く?」

子どもに使える咳止めの薬にはいくつかの種類があります。炎症による刺激を鎮める鎮咳剤や痰の切れをよくする去痰剤などです。このうち鎮咳剤といわれる薬は子どもで効果を示すデータは十分ではありません。子どもは痰がからむことが多いので、去痰剤は多く使われますが、すぐに咳が止まるというわけではありません。咳止めの貼り薬は気管支拡張剤という薬で、気管支ぜんそくには効果がありますが、風邪の咳には効果は期待できません。つまり、咳止めは理屈の上では効果を期待していますが、結局、実際にはそれほど効くわけではありません。

「鼻水止めは効く?」

鼻水止めとして使われているのは抗ヒスタミン薬という薬です。アレルギー性鼻炎の鼻水はヒスタミンの作用で出てきますので、抗ヒスタミン薬は有効です。しかしヒスタミンが関与しない風邪の鼻水・鼻づまりには効果は保証されていません。また、抗ヒスタミンの作用により鼻汁の分泌が減るかわりにねばっこい鼻水になるため咳や中耳炎への悪影響もあります。さらに、抗ヒスタミン薬は脳に作用して眠気をもたらします。最近、その脳への作用により熱性けいれんが悪化するという報告があります。長期に使うことで成長期の脳の発達への影響も心配されており、子どもへの使用は控える小児科医が多くなってきました。

「解熱剤は脳障害を防ぐ?」

熱が出てそれが40度くらいにもなると、ご家族はずいぶんご心配されると思います。脳の障害は大丈夫か?けいれんはおきないか?など頭の心配をされる方も多いです。しかし風邪に伴う発熱自体で脳に障害が残ることはありません。脳炎や脳症、髄膜炎などで脳に病変がある場合には後遺症が残りますが、通常の風邪ではまず大丈夫です。熱性けいれんは発熱にともなっておきますが、解熱剤をあらかじめ使っても予防の効果はないといわれています。つまり、解熱剤を使うことで脳障害を予防できるということはないのです。逆に、昔よく使われていた解熱剤でインフルエンザ脳症を悪化させるものがあることがわかり、小児科ではその種類の解熱剤は一切使わなくなりました。現在はそのような心配のない解熱剤を処方しています。