25)RSウイルス感染

 「お母さん、やっぱりRSウイルスが陽性でした。こんなに苦しそうだから入院しましょう」。ゼイゼイした呼吸で、熱も4日目、母乳も飲めなくなってきた5カ月の男の子です。幸い入院後の経過は順調で、5日間で退院できました。

 RSウイルス感染症は、毎年夏ごろより見られ始め、秋に入ると急増し、年末をピークに春まで流行が続く「秋風邪」の代表です。今年は7月上旬ごろから報告数が急増し始め、過去10年間で最も大きな流行に。現在も例年に比べて高い水準で推移しています。

 子どもの半数以上が1歳までに、ほぼ100%近くが2歳くらいまでに、このウイルスに感染し、その後も感染を繰り返します。
 感染を繰り返すうちに、だんだん軽くなっていきますので、大人は軽い風邪症状のことがほとんどです。

 4〜5日の潜伏期間の後、せき、鼻水、発熱などの風邪症状が始まります。初めてRSウイルスに感染した乳幼児の約3分の2は1週間くらいの風邪症状で終わりますが、残りの約3分の1は気管支や肺にまで炎症が広がり、肺炎や細気管支炎を起こします。

 肺炎では高い熱と激しいせきが続き、呼吸が速くなります。細気管支炎では喘鳴(ぜんめい)がひどく、激しいせきや呼吸困難、多呼吸が起きます。生後1カ月未満の新生児では、熱がなくても重症化することがあります。
 初感染者全体の0・5〜2%が呼吸困難や無呼吸などで入院しています。特に生後6カ月未満の赤ちゃんは、免疫が未熟なため重症化しやすいといわれています。RSウイルスを直接やっつける薬はまだありませんので、次の点に注意して赤ちゃんを守ってあげてください。

(1)マスク、手洗い、うがいを徹底する
 赤ちゃんがいるご家庭では、風邪をひいた人は必ずマスクをつけましょう。外出後や調理・食事の前の手洗いやうがいもしっかりと行いましょう。
(2)身の回りのものを小まめに消毒する
 赤ちゃんは何でも口にするので、アルコールなどで赤ちゃんの周囲にあるものを小まめに消毒しましょう。
(3)流行期には人ごみを避ける
 RSウイルスの流行中は、不用意に赤ちゃんを人ごみに連れて行かない配慮も必要でしょう。

 川崎琢也(県小児科医会長、かわさきこどもクリニック院長)