2)インフルエンザ

 新潟市の急患センターで診療していた時、「熱が出て、もうろうとしている」と、お子さんを抱っこしたお母さんが飛び込んで来ました。夕方から発熱、数時間後に意識障害とけいれんを発症し、不幸にも亡くなられました。最も重いインフルエンザの合併症「インフルエンザ脳症」でした。全国で年間数百人が罹患、約8%が亡くなり、約20%は重度の後遺症を残すとされています。

 子どものインフルエンザで怖いのは、こうした合併症が多いことです。他に中耳炎や肺炎、気管支炎、筋炎(激しい筋肉痛と腫れ)、異常言動などがあります。

 前述のような不幸な出来事が少なくなるように、われわれ小児科医はワクチンの接種を呼び掛けてきました。ワクチンは発症を防ぐだけでなく、感染しても合併症や重症化を予防する効果もあります。ぜひ、接種してください。生後6ヵ月から受けることができます。

 ワクチンの効果を示すデータも多く発表されています。都内のある小学校では1983年度から4年間はワクチン接種率が平均96%で学級閉鎖が平均1日でしたが、94年度から5年間で接種率が2%まで下がり、学級閉鎖は97年が21日、98年が59日と大幅に増加しました。2003年度から5年間で接種率が平均80%に上昇し、学級閉鎖も平均6日に減少しています。

 インフルエンザは、突然高熱が出て喉の痛みや頭痛、筋肉痛、倦怠感などを生じる病気です。特に子どもは症状は重く、長く続きます。診断には迅速キットを用いますが、発症後少なくとも6時間以上たたないと確実な判定ができません。発熱したら6時間以上経過を見て、一般の医療機関を受診してください。

    佐藤雅久(県小児科医会副会長、さとう小児科医院院長)